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男の育休取得(取得するまで編)

みずりゅ @MzRyuKa

2020年の4月から育休を取得する40代男性のITエンジニアです。 イクメンなどの単語を聞くようになりましたが、現時点で「男性の育休取得率」の普及率は高くないようです。そのため、世に出ている男性の育休情報も多くはない印象です。 そんな状況下でもあるので、私が育休を取得するまでの経緯の話を書いておこうと思いました。もしかしたら、この情報が誰かの背中を押してあげられるかもしれませんので。

なお、前提として2020年3月時点の法制度で記載しています。

育休とは

育休とは「育児休業」の略です。 そして、育児休業とは「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(「育児介護休業法」とも呼ばれています)で定められた、労働者が仕事を休業することができる国の制度です。 基本的に、こどもが満1歳になる前日まで取得可能です。取得期間は個々人の自由です。必ず1年取る必要はありませんし、期間を分割して取るなどの方法もできる場合があります。また、定めらえた条件に該当する場合は1歳6ヶ月から2歳になるまで延長をすることもできます。

よく勘違いされるのですが「育児休暇」ではありません。前述の通り、会社の制度ではなく国の制度です。そのため、会社に制度がないから取得できない、なんてことはありません。条件を満たせば取得できるのです。しかし、実際に育休を取得するには、提出書類などの面で所属会社にも協力してもらう必要があります。

また、基本的に育休中は会社から給与は支給されません。その代わりに、雇用保険から「育児休業給付金」という形で支給されます。育児休業給付金の支給額の目安は、前年度の平均給与額となります。最初の半年が67%、それ以降は50%となります。

政府統計でみる日本の男性育休取得率

自分の話をする前に、データ的な話を書いておきます。

政府統計ポータルである「e-Stat」では、各省庁などが集計した統計データを参照できます。

https://www.e-stat.go.jp/

正確性の是非に疑問を持つ方もいらっしゃるとは思いますが、何かを検討する上での判断材料にできます。

さて、e-Statで確認した情報によると、男性の育休取得率については平成28年度で3.16%、平成29年度では5.14%、平成30年度では6.16%と、まだ10%にも達していません。

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000031852500&fileKind=2

しかし、政府としてはこの数字を増やしたいと考えているようで、「2020年(平成32年度)までに13%を目標」として活動しているようです。 その一環としてなのか、「イクメンプロジェクト」というプロジェクトも稼働しています。

https://ikumen-project.mhlw.go.jp/

「育児体験談」といったコンテンツもあるので、育休取得者の実際の声もみることができます。

このように、国としては男性の育休推進の動きが出ています。

男性の育休のメリット/デメリット

男性の育休のメリット/デメリットは以下だと自分は考えます。

メリット:

  • いつでも妻/こどもへのフォローができる
  • こどもの成長を一日中目のあたりにできる
  • 育児についての理解が深まる(他者に対しても配慮できる)
  • これからの男性の育休取得者への支えになれる
  • パパっ子に育つ/育てられる(笑

デメリット:

  • 収入が減る
  • 復帰後のイメージが難しくなる
  • 所属組織によっては出世は遠のく/閑職に追いやられる
  • 「自分の時間」は確実に少なくなる
  • イベント(飲み会や勉強会を含む)の参加は、基本できない

現在は、核家族化や近隣の人との関係稀薄が進み、育児について悩まれるお母さんが増えています。もちろん、そういった子育てに悩むお母さんをフォローする団体やWeb上のコンテンツもありますが、すぐ近くでフォローしてくれる人がいるのが何よりの支えになるでしょう。

デメリットについては、仕方ない部分もあるでしょう。とはいえ、出世/閑職の件については、終身雇用の崩壊しつつある現在で、社員のことを考えてくれない会社であると判断するリトマス紙として捉えても良いかもしれませんね。 また、育休は「休暇」ではありませんので、「ずっとゲームをしていよう」などと不埒なことを考えてはいけません。

完全育休か半育休か

育休では、完全育休と半育休の2通りあります。なお、用語として正しいかが不明なのですが、わかりやすいのでこの言葉を使っています。

「完全育休」とは、後述の「半育休」の対として使っている言葉(造語)です。本来の意味での「育休」ですね。仕事を全て休業して育児を行います。

「半育休」とは、育児をメインにしつつも、空いている時間に所属会社の仕事を実施して、その分の給与をもらうことができます。 ただし、月80時間まで労働時間に上限があったり、時短勤務のように決まった時間で働かせる/定型的な決まった仕事をさせるといったことは、育児休業の趣旨に反するためできません。本人しか知り得ない情報のため止むを得ず、繁忙期で人がたりないため助っ人として一時的に手伝ってもらう、などの仕事になります。

また、取得した給与が一定額(給付金+給与の額が平均給与の80%)を超過すると、給付金が減額されます。そのため、働く時間を常に意識していないといけません。 会社側も働いた時間を管理する必要があるので、労働時間の提出を会社側から求めれらます。この情報が、支払われる給付金に関係してくるようです。

半育休のメリット/デメリットは以下になると考えます。

メリット:

  • 収入減の足しになる
  • 仕事を通じて会社との繋がりがある

デメリット:

  • 仕事をメインにはできない
  • 育休期間中にまとまった時間を作るのは難しい

ただし、引き継ぎがうまくいっていなかったり、民度の低い会社である場合には、半育休ということを盾にして、色々と作業を振られてしまう恐れもあります。もちろん、そんな会社のやり方が自体がおかしいのですが、半育休の人に対しての仕事の振り方をしっかり認識していない人もいるので、「おや?」と思った際にはきちんと確認しておきましょう。

なぜ取得したのか

「自分のため」です。 もちろん、こどもも含めた家族のためでもあるのですが、40歳を超えてできたこどもであったので、残念ながら長い時間を一緒に過ごすことは難しいと思いました。であれば、悔いのないように過ごしていきたい、そう考えました。

また、育休の取得には条件があります。 詳細は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」で確認していただくのが確実ですが、簡単に書くと以下の2点です。

  • 今の所属会社に1年以上在籍している
  • 対象のこどもが1歳6か月に達する日まで、会社との労働契約満了することが明確でない

妻の妊娠発覚時、実は転職活動中でした。ですが、転職ができて新しい会社に所属した場合、育休を利用することはできません。 ですので、転職活動を情報収集にシフトする方向にして、育休に取る方向で行動しました。 もちろん、年齢的な面で転職市場は厳しいと考えたため、最初は悩みました。 しかし、こどもが1歳になるまで期間はこの1年しかないのだ、と考えるとスムーズに決意できました。 数年間続けた妊活の結果に生まれたこども、というのも決断の後押しとなりました。

さいごに、男性の取得率が低いことも関係してきました。 取得したことで、何かしらの情報発信につながる、簡単にいえば「ネタになる」と思いました。

取るために実施したこと

まずは、会社の上長に育休を取得することを上長に伝えます。こちらは主に育休後の業務引継の関係ですね。また、届出提出に関して、上長の承認が必要な場合もあります。

次に、会社の総務などに育休する旨を伝えます。こちらは主に社内での手続きや育児休業給付金に関する対応になりますね。 だいたい、育休に入る1ヶ月前には必要な手続きをすませるようにします。

続いて業務面での対応です。

自分は客先に常駐して仕事をしていたので、常駐先での作業を引き継ぐために各種調整や引継資料を残すようにしました。 ただ、引継先についてはギリギリまで決まらない状態であったので、引継相手は消化しきれないだろうなと思っています。

また、常駐先から引き上げる時期はわかっていたので、新規の案件や中途半端な時期に抜けないように業務の実施時期を調整していました。とはいえ、相手がいることなので、全部はこちらの想定通りには動きませんでした。幸い、育休に入る直前の3月は、開発案件1つだけを対処するに留まりました。

あまりうまくいかなかった引き継ぎ

自分は、妻が安定期に入った2019年7月に上長へその旨を伝えました。 当時、自分は自社から1人で客先に常駐して、ほぼ1人で開発や保守/運用を実施していました。また、常駐していた数年間で、プロパー社員の入れ替わりが何度かありました。そのため、自分の関与している業務の詳細を知る人間がいない状況でした。 その点も関係して、育休について上長へ相談した同じタイミングの2019年7月に、上長の承認のもとで常駐現場にも今年度中には離脱する旨を伝えました。 その際に、自分の後任を探す話が所属会社側/常駐先でそれぞれ挙がりました。

しかし、蓋を開けてみれば、会社としては1人常駐を減らす方向で考えていたので後任をまともに考えず、常駐先も会社が後任を探すのをあてにしていたのかこれまた後任をきちんと探していませんでした。そんな状況だったので自分も呆れて引継については自分からは何も話さないようにしていました。

そんな中の年明け1月下旬、会社側が急に保守を引き受けるという話を出してきました。常駐ではなく自社でなら保守を引き受けるという話になったようです。ただし、その保守も一時的に別の人に引き継いで、その後さらに別の人に引き継ぐという計画性のないものでした。また、常駐先も同じように、4月以降に参画してくる人に引き継いでもらう、として一旦別の人に引き継ぐという話になりました。結果、2-3月は本来の作業に加えて、急ピッチで引継をする羽目となりました。そんな状態での引継となったので、「不安である」ということで半育休として欲しい旨の打診を受けました。

自分の例のように、育休に入る半年以上前から働きかけてもうまくいかない場合もあります。結果として、あまり乗り気でない半育休という状況とはなりましたが、「社用携帯は持たない、即時対応を求める作業は行わない」との会社側との約束をして育休を取得することはできました。

まとめ

この章を記述している時点では、まだ育休には入っていません。しかし、この本が頒布される時期には、育休に入って育児に奮戦している頃でしょう。

男性の育休には、色々と阻害要素が多いのも事実です。ですが、少しずつではありますが、男性が育休を取れるような政策や企業文化が出てきているのも事実です。それは、仕事をとるか育児をとるか、ではなく仕事と育児を両立できる世の中を目指して進められています。

昭和や平成の前半では、育児を受け持っていたのは女性でした。令和になった現在もその状況の大半は変わってはいないでしょう。しかし、年々と男性が育児に関与していく比率は上がってきています。せっかく機会があるならば、育休を取得してみてはいかがでしょうか。後々になって後悔をしない(奥さんにグチグチ言われないことも含む)ように。

日本の男性育休率を上げるのは、貴方の決断ひとつにかかっています。

[column] 育休取得率の闇@おやかた

あなたの会社で育休を取っている男性社員はいますか?男性社員の育休取得率は会社の評価指標の一つになっていて、「弊社は男性のなん%が育休を取っています、といったアピールにも使われています。

さて、その育休の期間と時期について少し注目してみてください。人事報に育休に入った旨が載っているならそれをチェックしてみてください。

1か月、あるいはそれ以上の育休が普通であれば、理解ある素敵な会社ですね。あるいは、上司に理解があるということでもありましょう。

次に時期です。4月27日頃から、5月8日頃の2週間で取得している人はいませんか?あるいは、12月25日頃から、1月5日頃の2週間で取得している人はいませんか?そうです。この時期は、GWであり、年末年始休業の時期です。

実質的な休みは2-3日です。もちろん、家族にとって、夫が家にいて育児ができる時間は、年末年始であろうとGWであろうと重要です。育児に平日と土日休日の区別はありませんから、連続的に育児ができる2週間は尊いものです。

”連休”にくっつけての育休取得も悪いものではありません。実質的には2-3日の追加で2週間程度の育休が取れますから、上司や同僚への根回しも楽でしょう。同じ期間休業しようと思った場合と比較すると、業務影響は小さいですからね。また、有給休暇の消費が抑えられます。2-3日とはいえ、年間20日程度しかない有給休暇をここで消費すると、年度末に足りなくなってしまう可能性があります。したがって、有給消費を抑えつつ育児をすることができます。

そして、企業にとっては、男性の育休取得率という大きな数字をカウントすることができます。しかも業務影響を抑えた状況で。実質2-3日の投資ですから。

しかしながら、それを育休取得率のカウントに使うのはやはりもやっとしてしまいます・・・

[/column]

[column] 男性版小1の壁@おやかた

小1の壁という言葉をご存知でしょうか?

子供が小学校に上がったときにおこってくる問題のことです。例えば、保育園までは延長保育などで夜遅くまで預かってくれる状態であるのに対して、小1になったとたんに毎日昼過ぎに学校が終わってしまいそのあとの居場所がないなどの問題です。また、保育園は、原則お休みの日はありません。ところが小学校は夏休みや冬休み、学校行事の代休など、平日の休みがかなりの日数あります。

これらに起因して、女性が仕事を続けられなくなるなどを表した問題です。働く女性を取り巻く環境、という点では保育園の待機児童などの問題は大きくクローズアップされますが、小1の壁という問題はあまり取り上げられません。保育園に預けるワーキングマザーが働くことを断念することが多いからこそ、あえてという表現になっているのかもしれません。

一番厳しいのは、やはり1年生です。保育園は、3月31日まで預かってくれます。しかし4月1日から4月5日まで(入学式まで)は、本気で行くところがありません。そのため、我が家では、私(夫)が1週間休暇を取りました。

しかし、前述のとおり、育休は子が1歳6か月になるまでという原則があります。したがって法定の育児休業を充てることはできません。幸い、会社の制度として積立休暇がありましたので、それを使うことにしました。積立休暇とは、失効する有給休暇を、子供の介護や学校行事の対応、ボランティアや自己研鑽などの目的に利用できる任意の制度です。子供の介護・学校行事対応ということで申請し、入学式までの1週間のうちで春スキーに行きました。

もちろん、これも会社や上司、同僚の理解や調整が必要なことは言うまでもありません。そもそも会社にそういう制度がない場合には利用できませんが、あらかじめ調べておくとよいでしょう。

もちろん、学校の休み対応で有給を取る頻度も増えるでしょう。どちらが対応するのか、どちらが対応しやすいか、という観点で分担する必要があります。任せっきりはダメです。

案外1週間休む!というのは事前調整で何とかなるので夫の方で対応し、代わりにそれ以降の突発は奥さんのほうで対応してもらうようお願いするとかいう相談・分担をあらかじめしておきます。逆に、夫の職場の自由度(業務の裁量)が高い場合や勤務地が近い場合など、突発は夫で対応するので、長期/あらかじめ決まっている予定については奥さんにお願いする、といった分担も可能です。もちろん半々に対応、というのも選択肢としてはアリです。

重要なのは、相談すること。奥さんが対応することが当然などという態度でいると大きな禍根を残します。俺休めないよ、とかいう主張も相談ではありませんよー。

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