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働く

社会人になると一般的には、毎月20営業日ほど、8時間以上の勤務時間が生じます。月の2/3の日にち、起きてる時間のうち半分以上は働いているということです。それが40年以上続くと考えると、人生の半分くらいは働いているのでは?

働くということは人生の中でもとても大きなファクターです。

働くことの意味

まず労働者側から見たときの働くことの意味を考えてみましょう。

  • 何かしらの組織に属する(もちろん属しない働き方もある)
  • 少なからずの時間を費やす
  • 肉体や頭脳で成果を出す

組織に属する

普通は会社と雇用契約を結びます。完全に個人のままで働くことは希でしょう。

会社などの組織に属するということは、その組織の人間とコミュニケーションを取るということです。

もちろんコミュニケーションが苦痛な人は世の中にたくさんいます。そういった人はなるべくコミュニケーションを取らなくてもなんとかなる振る舞いをするか、コミュニケーションを取らなくてもすむ職業を選ぶことでしょう。コミュニケーションが苦手だけど、取らざるを得ない場合は…。どうすればいいのでしょうかね。

少なからずの時間を費やす

大抵の職場では8時間かそれ以上の労働をすることでしょう。それを無為に過ごすかどうかは会社及びその人次第です。

沢渡あまねさんが提唱する概念として、会社ごっこというものがあります。思考停止して、当たり前と思うことをやり続けてるけど、実は無意味・無価値・非効率的なものを指します。

  • 判子スタンプラリー
  • なんなら判子を押すロボットで捺印
  • 無駄に印刷される資料
  • 偉い人の思いつきで上から振ってくる理不尽で無駄な作業
  • 参加必須のくせに会費を取って、上司のご機嫌取りをしなければいけない飲み会

こういったものをして会社ごっこをして、金を稼いだ気になるというのも、時間の使い方です。

こういった会社ごっこは少し極端です。大会社にありがちですが、少し極論です…。たぶん。

多くの会社ではそこまではひどくなく、ある程度の裁量のもと、働けることも多いでしょう。

会社で労働している時間の使い方は、よほど規定や監視が厳しくなければ、ある程度コントロールができるはずです。

肉体や頭脳で成果を出す

働いている人は、何かしら成果を出しているはずです。デザインをしたり、要件定義をしたり、プログラムを書いたり、広報をしたり、営業をしたり、建築現場で建物を建てたり、何かしらの成果があるからこそ、その成果を使って営利団体としての会社が成り立っているはずです。

ある意味、体を動かす、頭を動かすという側面もあります。健康維持の為に働くという側面もあるでしょう。

[column] 経営者目線

意識高い系の人がよく経営者目線を持てというようなことを言いがちですが、果たしてそれは本当にもつべきものでしょうか?経営者目線で働きたいなら経営層として働くべきでしょう。

必要以上に経営者に忖度しても仕方有りません。無意味な仮定により社内に混乱をもたらす行為に相違ありません。

もし経営者や管理者がそれを強要してくるようであれば、それはもはやそれらの人たちが自己の責任を放棄しているだけです。

もちろん、会社が成り立つためにはお金が必要なわけで、お金に対する感覚を持つことは間違いではありません。大抵のケースでは。でも、お金に対する感覚を持つことと、経営者目線で働くことは同一ではありません。

ただ、逆に経営側から考えたときには経営者が従業員に支払う給料の原資って、そもそも会社が稼いできた利益から出ているわけですよね。 利益に貢献している人に対し、給与面でのフィードバックがあるというのも当然の話で、今の給与に不満があり、経営者が給与UPの交渉に応じてくれない場合、そういったところに原因がある事もあります。(一般的に労働者と使用者は、契約上では労使対等であるとされていますが、こういった鍵になる情報は経営者にはありますが、労働者には無いなどといった情報量の不均衡があり、こういったものが労働上の一方的な搾取に繋がっている。という面もあるので、一概には言えないのですが。)

一般論でいうと、たとえば原料などのコストが無いIT業界ですら、支払われている給与の最低2.5倍、一般には3倍程度の売上(生産高)がないと、会社としてはその人の給与に関するキャッシュフロー上は赤字になると言われています。理由は2点あり、

  • 会社としての間接費がそれなりに掛かる事
  • 各種の労働者が加入している社会保険は労使折半で支払われており、あなたが支払っている額と同額を会社が支払っている為

です。 (逆にIT業界において、一人で出した売上の四分の一も給与が支払われていないのであれば、交渉の余地はおおいにあるかもしれませんね。)

[/column]

スキルや向き・不向き

働く上で、肉体から頭脳までさまざまなスキルが必要になります。新卒社員の場合はスキルの習得を会社が面倒みてくれることもありますが、長期的に考えると、どういうスキルを習得し、使っていくかを選択することになります。

ここではスキルという言葉は、業務を遂行する上で何かしらの専門知識や技能を指すものとしておきます。講座を受けるもの、資格試験を受けるもの、学校で習うもの、独学で身につけるものなど。あらゆるものです。

スキルの習得は業務の範囲か、そうじゃないかは、それぞれの業界や会社、募集要項、契約条件などによって異なります。

スキルの習得に関して明確になっているケースはあります。「要普通運転免許」などであれば、とても分かりやすいものであり、誤解の余地もありません。

ところが、たとえばソフトウェアエンジニアだとして、「オブジェクト指向を理解し、実践的に使えること」というスキルだとしたらどうでしょうか?その現場は、単にいまどきに一般的に使われているオブジェクト指向プログラミング言語を最低限触れる程度の水準を求めているのかもしれませんし、もっと高レベルな議論ができることを想定しているかもしれません。

オブジェクト指向とは何か?何を持ってオブジェクト指向とするのか?どこまでをオブジェクト指向とするのか?理解とはどのレベルまでを理解と呼ぶのか?実践的に使えるとは、具体的にどういう環境でどのレベルで使えることを「実践的に使えること」と呼ぶのか?

また、その会社・チームにおける要求水準を、お互いがはっきり認識できていたとして、チームメンバーがその水準に達していない場合、どうあるべきなのでしょうか?

「この程度は常識なのだから、業務時間外を使ってでも必ず習得しておいて欲しい」といわれる・命令されるケースがあるかもしれませんし、業務時間とは別の時間で社内勉強会があるケースもあるでしょう。あるいは、業務時間を使ってでも他の人と同じ程度にできるような方法論、たとえばペアプログラミングやモブプログラミングを実践することで、いつの間にかオブジェクト指向プログラミングや設計が上達しているかもしれません。

ソフトウェアエンジニアリングの世界では、様々な知識や技能が数年単位で登場したり、更新されたりします。長く使えるものもありますし、短い寿命しか持たないものもありますが、一般的には、常に学習し、知識や技能をアップデートし続けないといけない業界であるとされています。

スキルには、「え?それはスキルと呼ぶべきなのか?」というものも含まれているかもしれません。コミュニケーションはスキルなのでしょうか?もし「コミュニケーションはスキルじゃないよな?」と思う方は、ソフトスキルで検索してみるといいかもしれません。

得意・苦手と好き・嫌い

あるスキルを使った作業が得意か苦手か、あるいはそれが好きか嫌いかは人それぞれあると思います。

一番幸せなケースは得意と好きが一致しているものです。さらにいうと、そのスキルを使った作業だけで、仕事が構成されているのであれば、その人は「常に得意で好きなことを仕事にできている」ということになります。これ以上無いベストでしょう。

一番不幸せなケースは、苦手かつ嫌いというものです。もしこれがその仕事の大半であれば、転職や業種転換を検討すべきかもしれません。

苦手だけど好きというケースは、成長のチャンスかもしれません。苦手かつ嫌いなケースでも、少し考え方を変えてみると嫌いではなかったりすることもあるでしょう。もちろんそうとは限りませんが。

得意だけど嫌いというケースはとても悩ましいものでしょう。それがどれくらい得意なのか?嫌いなのか?によって、単に贅沢な悩みになってしまうかもしれませんし、人によっては、それが転職理由になることすらありえます。

常に自分のスキルについて見つめておくことと、自分の仕事人生のヒントになるでしょう。たとえばスキルについて表にしておくといいかもしれません。

スキル項目 得意かどうか 好きかどうか
要件定義
大設計
詳細設計
実装 ×

これまたソフトウェアエンジニアリングですが、上流工程と呼ばれるものの方が得意かつ好きな人の事例です。

スキル項目 得意かどうか 好きかどうか
JavaScript
TypeScript
React
jQuery × ×
HTML
CSS

この場合は、先ほどよりも詳細に踏み込んだスキル表です。

JavaScriptは好きだけど、TypeScriptという静的型付けを導入した言語の方がより望ましい人ということになります。専門的なたとえですが、最近は増えている事例です。

Reactは今、よく使われているウェブライブラリです。jQueryは使われてはいるものの、どんどんその領域を狭めていっているものです。すごく雑に説明しますと、jQueryが古くてReactが新しいものと認識しておいて、大体合っています。古い知識よりは、Reactという新しいものが得意かつ好きな人になります。

HTMLやCSSは、ウェブプログラミングをする上ではどうしても知っておかなければいけない要素技術です。最低限知っているけど、あまりそれ自体は好きでもないなーくらいということでしょうか。

さらに詳細に踏み込むこともできるでしょう。

主観と客観

もっとも、「得意・苦手」は客観的に見たときに本当にそうなのか?ということもあるかもしれません。自分では得意だと思ってるんだけど実はあまりそうじゃなかったりするかもしれません。

「得意」を教えられること、そして教えられた人が分かりやすいといえることと捉える方法はあります。

人に教えられないけど、実際には得意であるというケースも往々にして存在しているのが悩ましいところです。特に職人の世界では、その道のトップだが、教えるのは壊滅的ということもあるでしょう。

「得意」を、実践で美味く使えていると実感できているか?で捉える方法もあるでしょう。ただしこの場合、そのスキルが実はあまりその仕事において重視されていないような事例では「分からない」という結論になってしまうこともあります。

業務として、スキルマップと呼ばれるものを作成することになった場合には、周りの人にどう判断すればいいの?って聞けばいいでしょう。

個人として、自分を見つめ直したいだけであれば、思いつく単語で検索してみて判断してもいいですし、あまり深く考えないという結論が望ましいかもしれません。あくまで指針として考えているだけなので、それを考えるあまりに、メンタルが壊れてしまっては元も子もありません。

各種労働法は何が嬉しいのか?

お金の章で、様々な働き方の形態があることを述べました。改めて抜粋しつつここに再度記載します。

これらのそれぞれの働き方で、「各種労働法で護ってもらえます。」「団結権、団体交渉権および団体行動権もあります。」という事を繰り返し記載しています。

簡単に言うと、労働契約を結んで労働をする場合、各種労働者を護ってくれる法律があり、これらの保護を受ける事ができます。 代表的な法律と要点、メリットについて、次にまとめておきますので参考にしてくださいね。

正社員(無期雇用契約)

各種労働法で護ってもらえます。団結権、団体交渉権および団体行動権もあります。 60歳まで原則働けます。

正社員(有期雇用契約)

有期契約でも、各種労働法で護ってもらえます。 団結権、団体交渉権および団体行動権もあります。 60歳超えたり、例えば産休や育休の穴埋めなどで契約される場合はこういう契約が多いです。

派遣社員

派遣元の会社に就職し、派遣先に行って仕事をするのが一般的な流れです。 この場合も各種労働法で護ってもらえます。団結権、団体交渉権および団体行動権もあります。 ただ派遣先は派遣社員の権限が弱くなりがちで、問題となるケースも多いです。

アルバイト(パートタイム労働者)

パートタイム労働者でも、各種労働法で護ってもらえます。 団結権、団体交渉権および団体行動権もあります。 更にパートタイム労働者は正社員に比べて権限が弱くなりがちな事から、 問題になることが多い点について、労働契約などの記載事項がより厳しくなっています。 (昇給、退職手当、賞与の有無の記載が必須となります。)

フリーランス・個人事業主

各種労働法では護ってもらえません。 団結権、団体交渉権および団体行動権もありません。

労働基準法

通常「労基法」と呼ばれる、憲法が保証する労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を具体的に示した労働三法のうちの一角です。 簡単に概要をいうと、他者に労働をしてもらう時の最低ルール集です。

代表的なポイントを次からおさらいしていきましょう。 労基法は重要なポイントがめちゃくちゃ多いせいで長いんですが、いくつかの項目についてピックアップします。 ”へ~こういう制度もあるんだ。”と知っておくといざという時助かるかもしれないので、コラム感覚で読んでみてください。

労働条件について

「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」 「労働者及び使用者は、労働協約、就業規則および労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。」とうたわれています。 もっとも、契約してしまうととたんに労働者の立場が弱くなるんですけどね…

労働条件の低下をさせてはならない

労基法が定める基準は、最低値であり、これを下回った条件で働かせることはできません。 また自社の労働条件が労基法の基準を上回っていることを理由に下げる事は許されないです。 (社会経済情勢の変化など、他に決定的な理由があるときには許容されるのですが、超レアケース。) また、労働条件を低下する変更も一般的には許されません。(会社が潰れそうなどの特殊事情だと許容されるケースもあるようですが、こちらもレアケースです。)

したがって、一度上げた給与水準を下げることは非常に難しいことになります。そうするとどうなるかというと、会社は給料を上げるなどの労働条件の改善を渋るようになります。春闘などでベアという言葉を聞いたことがあるでしょうか。要するに、月給(の基準額)を上げるように会社と交渉することですが、一度上げた給与を下げることが難しいため、その上昇額はわずかなものになります。もっとも、これまでの労働組合などの粘り強い交渉の成果が現在の給与水準であるということも言えますが・・・

均等待遇の原則

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしてはならないとされています。

当たり前といえば当たり前ですが、では果たしてそれが本当にないかというと微妙なところ・・・。見えづらいところ、あるいは無言のなんとやらでそうなっているところがある可能性はあります。

強制労働の禁止

使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意志に反して労働を強制してはならない事が規定されています。

なお、本条に違反した場合は労基法上最も重い処罰を受けるようになってます。(1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金)

つまり8時間仕事した後、「帰ります」と言った場合、上司や指揮命令者がそれを止める事は許されないって事です。法的にはね。

中間搾取の排除

何人も、法律に基づいて許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない事になっています。

[column] 職業紹介や派遣は?

例えば職業安定法上の有料職業紹介事業や、労働者派遣は、派遣元、派遣先、派遣労働者の三者で一つの労働関係を構成する為、第三者が労働関係に介入することにはならないんだそうです。 (派遣免許がなかったらもちろん、労働者派遣法にもとづいて違法になりますけどね。)

[/column]

もし、労働基準法違反の労働契約をしたら…

この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、無効となった箇所はこの法律で定める基準に置き換えて解釈されます。例えば、最低時給を下回る労働契約があったとしても、時給についての契約は法律基準で上書きされます。このように、変な労働契約になってても労働者が保護されるということになります。

解雇も厳しく制限されてるよね

次のどれかは満たさないといけない事が決まっています

  • 少なくとも30日前に解雇することを予告して解雇
  • 解雇予約手当(30日分以上の平均賃金)を支払って即時解雇
  • アとイの併用(例えば20日前予告と10日分の平均賃金)

つまり解雇をしようとすると、最低でも1ヶ月分の賃金は出るようになっているわけですね。

また、解雇予告なくして解雇できる労働者、労働契約は存在するが、例外事項で労働者が保護されてたりします。

  • 日雇い労働者は解雇予告が不要だが、1カ月を超えて同じ使用者のもとで日雇労働をすると、解雇予告が必要になる。
  • 試用期間中(最大3ヶ月の規定あり)の労働者は解雇予告が不要だが、14日を超えて使用されるに至った場合は解雇予告が必要になる。

[column] 採用されて14日以内にいきなりクビになったら…

試用期間(最大3ヶ月)の間は使用者は労働者をいきなりクビにできますが、 14日以内にいきなりクビにした場合に、就職のために引っ越してきた労働者が、契約解除の日(クビになった日)から14日以内に帰郷する場合においては、 使用者は、必要な旅費を負担しなければならないと定められています。 ※引っ越し代も出たんじゃなかったかな…

[/column]

賃金支払の5原則

  • 通貨で支払うこと(通貨支払の原則) ※事前に定めがあれば現物支給や振込支払いでもよい。

  • 直接支払うこと(直接支払の原則) ※派遣労働者の賃金を派遣元事業主に支払うのは認められている。あとは妻(使者)が受け取りに来たみたいなケースも許容されている。

  • 全額支払うこと(全額払いの原則) ※税や社会保障費等、控除は可能だが。

  • 毎月1回以上支払うこと(毎月1回以上払いの原則) ※年俸制社員であっても毎月支払う必要があります。

  • 一定期日払いの原則 ※毎月、一定期日に支払う必要があります

このように、給与支払はかなり手厚く保護されています。

また、若干話はズレますが、会社が倒産した時に未払い給与がある場合、他の債権より優先されます(民法308条)。また逆にあなたの給与が差し押さえ対象になった時でも、全額差し押さえることはできません。1/4以内が差し押さえ可能です。このように、給与はかなり手厚く守られています。

会社が理由で休む事になったら手当(休業手当)が出る

使用者の責任による休業(例えば会社が火事になって仕事できないから休んで!というようなケース)の場合、使用者は、休業期間中のその労働者に、 その平均賃金の100分の60以上の手当てを支払わなければならない事になっています。

労働時間にも一応制約がある

休憩時間を除いて、1週間あたり40時間、1日あたり8時間を超えて労働させるのは実は本来は違法です。 (ただし36協定(さぶろくきょうていと読みます)があればこの違法な条件を緩められます。なのでほとんどの職場では36協定が結ばれています。)

労働基準法36条に、「協定を結べば労働基準法を超えて労働することがでる」とあり、それに基づく協定ということで36協定と呼ばれます。

[column] 残業80時間/月は死亡ラインである

労働時間が週40時間、月160時間が基準であることは先に述べました。それを超えた時間が残業時間となりますが、例外である36協定があったとしても、45時間を越える月が3ヶ月以上となると産業医の面談が必要になったり、100時間を超えてはならない、などの制約があります。

これは、超過労働時間が増えると、うつ病などの精神疾患やそれに起因する自殺などの発生頻度が上がるということから定められました。

ところで、100時間あたりで頻度が上がる、となった場合にも、その上限がその悪影響を及ぼす時間に置かれているというのはどういうことでしょうね。 普通安全率を見ますよね?

100kg載せられる台車があったとします。ここに100kgの重りを載せたら、10%くらいの確率で壊れます、なんていうバカな設計をする人はいません。100kg載せたら壊れる場合、例えば制限重量を50kgにしたり、200kg載せても大丈夫なように設計変更をします。いずれも安全率2です。

それを、人に対して適用する場合にどうしてこんな運用になるのか・・・これを決めた人は、安全率という言葉を知らないようです。

[/column]

使用者は労働者に休憩も与えなければいけない義務がある

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、 8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない事になっています。

休憩時間は「少なくとも」なので、一律1時間与える! とか1時間半与える!なんてことも法的にはできる。(残業時間にもカウントされません。)

休憩時間は、原則として一斉に与えなければならない事になっていますが、労使協定があるときは、労働者各人の自由なタイミングで与えることができます。

使用者は、休憩時間を労働者の自由に利用させなければならない事になっています。

[column] ランチョンミーティングは実は違法?

休憩時間は労働者の自由に利用させなければならないことになっています。 ということは、実は休憩時間中に仕事の話を振ってくる上司は軒並み労基法違反だったりします。よくいますけどね。

そして、そうなると、悩ましいのが、ランチョンミーティング。 昼食をとりながらざっくばらんなコミュニケーションをとるのが本来の目的ですが、会社でやるとなるとどうしたって業務ミーティングの側面が出てきてしまいます。

会議室であらかじめテーマを定めて議論するとか、欠席者に情報展開されにくいなどの不利益があり実質強制になってしまうなどが発生すると、業務でしょ、という判定がなされやすくなります。あるいは、参加者にネガティブな印象が生じてしまい、本来の目的が達成されないただの時間拘束となってしまいかねません。

あくまで任意のコミュニケーションとして活用してください。

[/column]

時間外、休日及び深夜の割増賃金もルールがある

残業(時間外労働)や、深夜労働、休日労働(※週1回ある法定休日の労働)をした場合は賃金が割増になります。 簡単なテーブルは次の通りです。

時間外労働の種類 割増率
60時間以内の時間外労働 25%以上
60時間を超える時間外労働 50%以上
深夜労働(22時~5時) 25%以上(※上の時間外労働と合わさって50%になる)
休日労働(※法定休日の場合) 35%以上(※休日労働で+10% 更に時間外労働で25%)
[column]辞める時にちゃんと適切に動くと過去の残業代を取り返せたりする

残業代の請求などの時効は2年です。つまり辞める時に請求を適切にすれば過去2年分の残業代が帰ってきたりします。 また必ずしも裁判をしなくても労働基準監督署に駆け込むとかでいける説もありますね。

また、そういう会社に限って「裁量労働制だ!」となどと謳って残業代を支払わない所も多いですが、簡単に説明すると 「裁量労働」 = 「仕事をしなくていい権利がある」 ので、次の様なケースでは裁量労働ではないと判断されます。

  • 遅刻したら遅刻がつく
  • 仕事中にサボってたら指摘される
  • 欠勤したら欠勤がつく

困ったら労基署(労働基準監督署)に駆け込もう! 親身になって相談してくれるらしいぞ!(そして指摘した会社には監査も入るらしいぞ!人事や総務は相当これを恐れてる感じもあるぞ!)

だいたいそういうケースでは円満退職できない事もセットなので、正々堂々と権利は主張して、貰うものは貰いましょう。

[/column]

有給休暇を与えるのもちゃんとルールがある

使用者は、業務を始めた日から6カ月間連続勤務し全労働日(総暦日数から所定休日を除いた日)の8割以上出勤した労働者に対し、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならないとされています

[column]「継続し」ってどういう事なの?

継続し というのはそもそも外国では有給休暇は一気に取るのが普通なので、そういう理由から記載されてるらしいです。その上で、海外の労働法を国内に持ってきたときに、国内の事情も考えてその後に「分割した」というのを付け加えた経緯があるんだそうですよ。 もはやトリビアでしかない気はしますが。

[/column]

使用者は、年次有給休暇を労働者の請求する時季(タイミング。要は労働者が指定した日や時間時間)に与えなければならないと決まっていますが、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができるとされています。

要するに、時期やその他の理由で今有給を取られては困る!という場合には、他の日にしてくれ、という権利が会社にあるということ。

ただし使用者が時季変更権を指定できない日が5日間あるとされており、今年から「5日年休使って!」あらゆる会社で言われてると思うけど、5日年休を使わせないと30万円の罰則規定があって、更にこの5日は時季変更権を指定できない日でないとダメらしい… ので全国の総務が頭を悩ませてるようです。

[column]使用者が時季変更権を指定できなくなる特殊ケース(従業員が辞める時)

ただし時季変更ができない場合(例:所定日で退職するが、所定日までの稼働日日数より多い有給休暇日数が残っていて、有給休暇を使用すると宣言したようなケース)は、退職日以後に変更できないので時季変更権は使えなくなります。

この状況だと、実は使用者は一切年休消化を拒否できなくなります。もし、円満退職にならない場合はせっかくだから全部使ってしまっていいと思います。正当な労働者の権利です。

揉めたら労働基準監督署に駆け込みましょう。すぐ監査が始まるケースもザラです。

[/column]

なお、最低でも労働者に付与される有給休暇日数のテーブルは次の通りです。

勤務した期間 付与日数
6ヵ月 10日
1年6ヵ月 11日
2年6ヵ月 12日
3年6ヵ月 14日
4年6ヵ月 16日
5年6ヵ月 18日
6年6ヵ月以上 20日
[column] 新入社員に有給休暇はない?

業務を始めた日から6カ月間連続勤務し全労働日(総暦日数から所定休日を除いた日)の8割以上出勤した労働者に対し有給休暇を付与すると定められています

ということは、勤続が浅い新入社員、中途採用の人には付きません。ただしこれも法が定めるのは最低限のラインであり、それを越えるものを就業規則により定めることは可能です。そういう意味で、就業規則は一度見てみることをお勧めします。なお、まともな会社であれば就業規則はすぐにわかるところにあります。

[/column]

妊産婦も保護されている

「妊婦」とは妊娠中の女性をいい、「産婦」とは出産後1年を経過しない女性をいい、両者を併せて「妊産婦」というんだそうです。

まず使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない事になっていますし、 妊産婦が請求した場合においては、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならない事になっています。 ただし、フレックスタイム制は除く。身体に優しいので…という理由だそう。

更に妊産婦が請求した場合においては、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならず、深夜業もさせてはならない規定があります。

生理休暇なども規定されていますので、調べておくと得することがあるでしょう。

実は制裁で減給するときも減給していい上限がある

使用者は、就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、 総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないという定めがありますね。 (理由としてはそれ以上減給すると生活が維持できなくなるから だそうです。)

労災法

まず簡単な前置きとして、労働が原因となる災害を労働災害と呼びます。 大きく分けると労働災害には2種類。

  • 業務上のものが原因となる災害は業務災害
  • 通勤上のものが原因となる災害は通勤災害

これらの災害については、労災保険が適用されます。(これらじゃないものは災害でも健康保険を適用させます。)

業務災害って?

業務災害は簡単にいうと、仕事をしている最中に(労働者が事業主の支配下にある状態)で、業務とその発生した傷病との間に相当の因果性がある場合に認定されるものです。

この業務上の疾病は

  • 災害性疾病(事故による疾病)
  • 職業性疾病(長期間に渡り業務に伴う有害作業が蓄積して発病する)

の2種類があります。

通勤災害って?

通勤災害は簡単にいうと、通勤中(仕事の行き帰り)に、負傷などの事故があった時に認定されるものです。

一般的に通勤として認められるのは仕事中でない、以下のケース(仕事してたら業務災害になるので。)

  • 住所と職場の間の往復
  • 職場Aから職場Bへの移動
  • 単身赴任先住居と帰省先住居(自宅)との間の移動

なお、これら以外の移動の経路を取ったり中断すると、原則それは「通勤」にならないので労災保険の対象外になってしまうのですが、仕事や日常生活に必要な移動に関しては最小限度、動きを認められてますね。(ただし上記3つのケースの経路のどれかに戻るまでは労災にならず、経路に戻った瞬間労災が適用されるようになるんだそうです。) 色々調べてみた感覚でいうと結構労働者の権利は認められやすい感じなので、判断に困るようなら法テラスや社労士さんに相談してみましょう。

過労で労災になる場合の判断基準

労災法の中に含まれるべき内容ではありますが、本書の想定読者に対して重要な内容だと思います。

特にITなど人が稼働しないと生産高が上がっていかないタイプの業務では、プロジェクトマネジメントの崩壊とセットで労働時間が激増する傾向がありますが、 労働時間の激増や急激なストレスの増加によって体調を崩し、休職せざるを得なくなった場合、極端に労働時間が多かっただけでも労災認定される事があります。

労災の認定要件1 異常な出来事があったとき(評価期間:発症直前から前日)

  • 普通の業務ではそうそう発生しない事故や災害が起きて、その程度が甚大だったとき
  • 気温の上昇又は低下等の作業環境の変化が急激で著しいものだったとき

の点について、客観的、総合的に判断されるそうです。

労災の認定要件2 短期間で過重な業務があったとき (評価期間:発症前おおむね一週間)

  • 発症直前から前日までの間の業務が特に過重だったか?
  • 発症直前から前日までの間の業務が特に過重だったと認められない場合にあっても、発症前おおむね一週間以内に特に過重な業務が発生したり、継続しているか?

の点について、業務と発症との時間的関連性(要は前後関係)を考慮して判断されるそうです。

労災の認定要件3 長期間にわたり、過重な業務があったとき(評価期間:発症前おおむね6ヶ月間)

  • 発症前1ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合

業務と発症との関連性が弱いと判断されることがあります。

  • おおむね45時間を超えて、時間外労働時間が長くなる(80時間を超えない時間残業までは全部この判断になります。)

ほど業務と発症との関連性が徐々に強まると判断されます。

  • 発症前1ヶ月におおむね100時間
  • 発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月あたりおおむね80時間を超える時間外残業が認められる場合

業務と発症との関連性が強いと判断されます。

なお、業務の過重性の具体的な評価に当たっては、労働時間のほか、不規則な勤務などのさまざまな負荷要因についても十分検討することとなっているので、単純に時間外労働時間が短いからといって労災が認められないわけではないようです。(※時間外労働長ければ強制的に認められるんだけどね。)

精神障害の労災認定要件

  • 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  • 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に業務による強い心理的負荷が認められること
  • 業務以外の心理的負荷や個体的要因により発病したとは認められないこと

心理的負荷の強度は、精神障害を発病した労働者がその出来事とその後の状況を主観的にどう受け止めたかではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価されるので、注意が必要かもしれませんね。まあ精神科や心療内科に行けば親身になって相談にのってくれるとは思いますが。

[column]長時間労働がある場合の評価方法(「強い心理的負荷」と認められる例)

いちおうここらへんがデッドラインらしいです。 この基準を超えてたら自己都合退職で会社辞めたとしても、会社都合に一気にひっくり返せたりします。 もうちょっと残業時間低くてもいけるという話も聞いたことはありますが、時々によってもこういった基準は変わる(年々、基準は厳しくなっている)ので、困った時は有識者に相談しましょう。 (結果、失業したときの保険(雇用保険)がいきなり支給開始されたりといった事になるはずです。ここの判断条件に困ったらハローワークに相談しましょう。失業保険の支給もハローワークが鍵になるので、そこの判断はハローワークで完結します。)

  • 「特別な出来事」としての「極度の長時間労働」

    • 発病直前の1ヶ月におおむね160時間以上の時間外労働を行った場合
    • 発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
  • 「出来事」としての長時間労働

    • 発病直前の2ヶ月間連続して一ヶ月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
    • 発病直前の3ヶ月間連続して一ヶ月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合
  • 他の出来事と関連した長時間労働

    • 転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合

※転勤したストレスも加味されてるのでこういう基準だったりするようです。

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雇用保険法

雇用保険は失業したときの給付を行ってくれたり、そもそも失業しにくいように各種給付をおこなってくれる政府が管掌する保険制度です。 また、ほとんどの労働者は強制的に入る事になっているものです。(入らなくていいのは1週間の労働時間が20時間以下の人など、非常に限定されているので・・・・)

ここではどんな保険があるのかだけ簡単に知っておきましょう。 「こういう制度がある」とわかっていれば、困った時には調べられる筈なので。

基本手当

失業した場合に、原則だと離職の日以前2年間の間に、被保険者期間(普通なら、≒働いてた期間)が12ヶ月以上あれば支給される手当のこと。 (※よく言うところの失業保険。)

なお、支給を受けるためには必ずハローワーク(公共職業安定所)に行って求職活動をしないといけないぞ! 支給される日数に関してもルールが決まってるけど計算ちょっと面倒くさいので、それもハローワークで確認しよう!

さらに、公共職業訓練を受けたり、失業者が多数発生した地域にいて認定を受けたり、全国的に失業の状況が悪化したりすると給付期間が延長されることもあるよ。

技能習得手当

失業し、公共職業訓練を受けるときには、受講の手当と交通費の手当が出るそうです。

寄宿手当

失業し、公共職業訓練を受けるときに、別居して寄宿した状態で受けざるを得なくなった時(失業者によって生計を維持されている同居の親族がいるケースにおいて)は、寄宿手当が出る事があるそうです。

傷病手当

失業者が離職後ハローワーク(公共職業安定所)に行って、求職の申込みをした後に病気やケガで職業に就くことができなくなった時に手当があるそうです。

高年齢求職者給付金

高年齢の失業者で求職活動をしている人については、更に別の給付金制度もあるそうです。

就職促進給付

失業したあと正社員ではない形で再就職(バイトとか)したときに、一定の条件を満たすと給付が受けられるそうです。

教育訓練給付

一定期間雇用保険に入っていると(≒勤務していると)、職務能力の強化や失職防止の観点から、教育訓練に関する給付を受けられます。(失業していなくても。) 簡単に説明すると、教育訓練給付認定の講座を受講した際、受講料の一部(2割~6割。仕事してたら2割だったような…)が講習受講後に戻ってくる制度です。 (高度な資格や教育だと、数十万を超える事も多く、講座によっては10万円ぐらい戻ってくる事もあるようです。)

高年齢雇用継続給付

60歳以上で再雇用をされた時に、だいたい給料が下がるのですが、給料が下がると生計の維持に影響が出る事から、一定以上下がった時はその補填のため、給付金が支給される制度です。

育児休業給付

育児休業時に給付金が受けられる制度です。 ※じつは育児休業時の給付は会社が支払ってくれるわけではない…。

介護休業給付

介護休業時に給付金が受けられる制度です。 ※じつは介護休業時の給付も会社が支払ってくれるわけではない…。

各種労働法関連についてのまとめ

いろいろな制度があり、セーフティーネットが何重にも敷かれている事がわかりますね。 困った際は法テラス(※26章 プレースホルダー参照。)に相談してみたり、実際の行政の窓口である労働基準監督署(いわゆる労基)や、ハローワーク(公共職業安定所)に相談してみましょう。 労働法のエキスパートである社労士さんや弁護士さんに相談できるのであればそれも良いですね。

ワーク・ライフ・バランス

一般的によく「ワーク・ライフ・バランス」を大事にしなければならないと言われがちですが、さてこの「ワーク・ライフ・バランス」とは何でしょうか?

ワーク・ライフ・バランスとは、「仕事と生活の調和」と訳され、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」といった意味になります。1

通勤時間・休憩時間を考えると、大抵の人の自由時間は、起きてる時間の半分を下回るでしょう。睡眠時間を削りすぎてる人は健康や労働の効率低下を心配した方がいいかもしれません。

もちろん時間をどう配分するかはその人の自由です。

通勤時間が長いひとは、通勤の最中に本を読む、ノートPCで作業できる、英語学習ができる、などといった有意義な使い方ができるならいいかもしれませんが、そうじゃないなら会社の近くに引っ越す、リモートワークの会社に勤める、自宅の近くの会社に入るなどを検討した方がいいかもしれません。

誰しも、1日は24時間しかありませんし、1週間は7日間しかありません。 仮に平日のみ9:00~18:00で勤務をしている人だと、睡眠を0:00~7:00と仮定し、通勤1時間程度だとしても、 平日は19:00~24:00の5時間が自由な時間、土日祝であれば1日を自由な時間として過ごせますよね。 逆に労基法上の一般的な残業の上限 45時間ギリギリまで残業をしている環境だと、月あたりの平日はだいたい20日程度なので、1日あたり2時間強の残業をしている事になります。 サービス残業や違法な疑いが出てくる長時間残業(月80時間以上~)をしている環境であれば、1日あたり4時間以上の残業となっている人も珍しくないかもしれません。 そうなってしまうと平日の余暇時間は取れず、土日に寝て過ごして体力を回復させ、体力が戻った頃にはまた仕事へ… という事になってしまう方もおられるのではないかなと思います。

さて、極端にワークの割合が多くなってしまった場合、何が問題なのでしょうか? いくつか問題はありますが、代表的な論点のみここではおさえておきましょう。

ハードワークになった時の問題点(1):そもそもあらゆる人が1日8時間以上の労働に耐えられるようにはなっていない

本章の労働基準法に関するセクション(労働時間にも一応制約があるよね)で、1日8時間以上の労働は実は違法である。という話について言及をしました。 なぜ法律上、1日8時間以上の労働が違法なのか? 理由は簡単です。 それ以上の労働を強制すると、人間としての正しい生活を送れなくなる(要は体調を崩す)人が出てきてしまうから、法律で制約をかけているのです。

ハードワークになった時の問題点(2):自分の体と付き合っていくのはあなただけである

本来、体調を崩すリスクが出てくる8時間以上の労働を続けた場合、とうぜん使用者(会社)に責任はありますが、最大限責任を取ってくれたとしても、 3年間の給与を払ってしまえば労働契約を一方的に打ち切れる「打切補償」というルールが定められており、企業はそれ以上の責任は取ってくれません。 もし、その期間を過ぎても体調が芳しくない状況になってしまうと、誰があなたの人生の面倒を見てくれるのでしょうか?

そう。自分の人生は結局のところ自分で面倒を見るしかないのです。(セーフティーネットとして、生活保護や障害者年金などの制度はあるにはあるのですが…) ハードワークにはメリットがないわけではない(仕事量に従って経験が積めるという点もあるので、誰も困らないレベルでのハードワークであれば良い面もないわけでは…)ですが、自らの体調を崩してしまっては元も子もありません。気をつけましょう。

ハードワークになった時の問題点(3):時間を削られていることによるボディブローのようなじわじわと効いてくるダメージがある

さて、多少のハードワークでも五体満足、健康そのものでもっと仕事できるぜー! みたいな人もいっぱいいます。あなたもそうかもしれません。 でももう1点、しっかりと考えていないといけない点があります。 情報の変化、働き方の変化に伴って、「40年ずっと同じ仕事を続けられる」ケースは年々厳しくなってきています。 同じ仕事であっても、内容が日々進化しており、中身は日々深く、難しくなっていっているはずです。

また、長時間の残業を強いられるタイプの仕事というのはものにもよりますが、作業に応じて生産高が上がるタイプの仕事である事が多く、その仕事は実は過当競争になっているのかもしれません。 この過当競争から逃れるためには、たとえば新たな技術を身に着けたり、知見を得たりといった「新しい事をキャッチアップするための時間」がどうしても必要になります。 ハードワークであればあるほど、逆にこの学習時間が取れないジレンマがあり、よりハードワークから容易に抜け出せない状況になっている… といった状態の方もいっぱいおられると思います。

そのハードワークが本当にあなたのためになっているのか? は一度自分に問いかけてみる必要があるかもしれませんよ。

ハードワークになった時の問題点(4):単純に時間がたりない

もちろん、仕事に時間を裂きすぎると、家族との時間がとれなかったり、奥さんとのコミュニケーションに齟齬が起きてしまうかもしれません… 趣味の時間も取れなかったりしますよね。そういうのもデメリットではないかと思います。 (仕事が趣味!みたいな人も稀にいますけどね。)

ワーク・ライフ・インテグレーション

昨今では「ワーク・ライフ・インテグレーション」という更に発展した考え方も出てきています。 これは簡単にいうとワーク(職業生活)と、ライフ(私生活)を統合し、さらに生活の充実を図っていこう。という考え方で、仕事と生活を両天秤にかけてバランスを取ろうというワーク・ライフ・バランスの考え方を更に拡張し、個人の生き方に含まれるすべての要素(仕事、家庭、趣味、学び、コミュニティなど…)を全て包含して捉えます。

企業としては新しい知見をもったリフレッシュした社員が、新しいアイデアや生産性の向上、ダイバーシティの推進をもたらしてくれると考えられており、個人としても人生をより豊かに生きる事ができる と言われています。 (まだ浸透としては過渡期だとは思いますが。)

最近時短勤務や在宅ワーク(テレワーク)、フレックス勤務などが働き方改革で見直されていますが、これらの考え方ともマッチするものなので、やがて一般的に浸透していくのではないかなと思っています。

もう、人生100年時代になると言われて久しいですが、そうなった時のために、もう少し超長期の人生設計も含めて、この際に考えてみると、良いかもしれませんね。

好きを仕事にする

たとえば、自分の好きで得意なスキルを活かせる仕事であれば、業務時間かそれ以外かを区別せずに、そのスキル上達を常に目指すという生き方もあるでしょう。

ソフトウェアエンジニアリングであれば、自分の好きなこと、スキルの上達を寝ても覚めても考えるという生き方です。

もちろん、これはやり過ぎるといけないので、どれくらいのところでバランスを取るか?という問題にはなります。

寝食を忘れる位、好きを貫き通せる職場を見つけられるといいなと思います。それは決して無いわけではありません。

[column] 働かなくて良いなら働きたくないが、労働も趣味の一つである

油田が庭にあって石油王だとか、財閥の御曹司で働かなくても唸るほどのお金が入ってくる場合、あるいは所有している土地からの収益(賃貸・大家)により働かなくても暮らしていけるという場合、当然無理に働く必要はありません。そうなりたいものです・・・ただし、お金持ちほど働くのが楽しいということでバリバリ仕事をしているイメージもあります。

働くのはもちろんしんどいですがそれなりに楽しい面もあるので、「趣味の一つです」と言えるような心構えで働くのも悪くないものです。

例えば、人間省エネに生きようと思えばかなり支出を減らすことができます。その状態で一生暮らしていけるだけの貯蓄があればあとは働く必要はありません。家族がいるとかだとそうも言っていられませんが、独身であれば、極論雨露が凌げ、飢え死にしない程度に食事が確保でき、外を歩いてもつ眉をひそめられない程度に衣類を着ていけるだけのお金があれば。とはいえ、それもあまりおもしろくなさそうです。

やはり、「趣味として働く」。やりたくないことはやらない、楽しいことだけして働く、という心構えで行きましょう。

ご唱和ください。

「俺にそんな口きいてもいいのかい?この会社にいることは趣味の一つに過ぎないから、やめるよ?」

会社に行くのがいやになったら、ストレスしかない環境になったら、転職するなり、しばらく無職を謳歌するなり、他の趣味に注力するなりを検討してください。趣味の一つに過ぎない「今の仕事」が全てではないし、そんな些細なことで潰れてしまう必要は全くありません。

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Footnotes

  1. http://wwwa.cao.go.jp/wlb/towa/index.html