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ギポタルのコンセプトときっかけ

ギポタルをはじめるにあたってのコンセプトときっかけについてお話しします。技術同人誌ポータルの意味と必要性、そしてそれらに付随して、ギポタルでできることなどについてです。

ただし、本章はプロジェクトの立ち上げ直後に書いています。まだ要件定義がようやく始まったところで、本体の実装はまだほとんど始まってすらいません。この本が完成されるときはギポタルが完全に立ち上がったときですから、実装の過程で当初のコンセプトからずれた(あるいはより洗練された)内容を多分に含む可能性があります。その変遷を追うというのも一興です。

技術同人誌ポータルサイトとは?

まずは、このサイト、サービスを立ち上げるに至った経緯、問題意識とこうあったらいいなという話から始めましょう。技術同人誌を取り巻く環境というものにも少しだけ触れるかもしれません。

技術同人誌とは?

まずはじめに、技術同人誌とは何らかの技術について取り上げた自費出版の書籍と定義することができます。自費出版と同人誌の定義にも微妙な差がありますし、 定義そのものが難しい面もありますが、いったんここでは出版社を経由しない書籍という定義をします。技術も幅広く、IT系あるいは評論・情報といわれるジャンルのものが多いのは事実ですが、 それにとどまるものではありません。

技術について取り上げるという面では、技術について解説するのみならず、その分野にかかわる人のエッセーも技術同人誌として含めることもできます。 また解説の方法として、マンガやイラストの形態を取ることも少なくありません。

[column] 情報商材との垣根・区別

このプロジェクトをはじめる少し前に、技術同人誌も多数扱っているECサイトであるBOOTHが、いわゆる情報商材を排除する、という旨のアナウンスを行いました。

当初の案内において、

  • ノウハウや情報を主体とする商品
  • 金融取引に関するツール及び関連商品

という告知がなされたため、技術同人誌に関係する人はざわつきます。技術同人誌が、第1項の「ノウハウは情報を主体とする商品」に明確に抵触するためです。

金融商品などに関する情報商材の決済プラットフォームとしてBOOTHを利用している例が少なからず存在します。本稿執筆時点で検索してみるといくつか情報商材っぽいものがヒットします。中には技術同人誌や技術書典のタグをつけているものもあるようです。

  • FX、株、仮想通貨など金融に関する情報商材、それに伴うツール及び関連商品【訂正後】

と後日訂正されますが、それでも依然として、技術同人誌と情報商材を明確に区分することは難しいと考えざるをえません。

例えば、金融商品について扱っていれば情報商材といえるでしょうか?Noですね。またそれらの対象に外れる情報商材(例えば副業や自己啓発系など)も多数あります。さらにそれら自己啓発系の情報商材と、ソフトスキルと呼ばれるような技術同人誌の境界はどこにあるでしょう?

難しい問題だと考えます。そしてギポタルもその点については難しいかじ取りを迫られています。ここではいったん難しいですね、という提起にとどめておきます。

[/column]

技術同人誌を入手するには?

販売チャンネルとして大きいのは、やはりイベントです。技術書典やコミケ、技書博などが大きなイベントです。小規模なところでは、銭けっとや再販Night(いずれも筆者が参加しているため挙げています)、他には文学フリマや面白同人誌バザールなどにも技術書を取り扱うサークルはあります。また勉強会やカンファレンスによっては、参加者が同人誌を持ち込んだり、同人サークルスペースがあることもあります。

例えば、JAWS DAYS 2019では数サークルが本を持って参加したようです。

https://jawsdays2019.jaws-ug.jp/archives/2548/

次に、とらのあなやメロンブックスなどの同人誌を扱う書店でも技術同人誌の扱いはあります。店頭在庫及び通販での対応が可能ですから便利ですね。

電子版では現在のところBOOTHが強いように思います。電子版のダウンロード販売と委託または自宅発送での物理本の通販があります。

ただしいずれの委託1先も、そもそもの前提としてサークル主が委託しない限り、取り扱われることはありません。 またその結果、必ずしもすべて技術同人誌が委託されているというわけではない状況となっています。

今困っていること

さて、前述のように、技術同人誌が頒布されているイベントはたくさんあります。そしてそれぞれのイベントの公式サイトにサークルの紹介文とともに本の紹介が掲載されていますが、 たいていの場合、あまり検索性はよくありません。

またそもそも技術書典では500前後のサークルがあります。このサークルを網羅的にチェックすることはもはや不可能です。物理的にせよ、オンラインにせよ、 チェックして買い回るにも限界があります。

さらに委託書店などにおいても、詳細な技術に関しての説明が検索できるかというと望み薄になります。 大枠の技術書、技術同人誌といったタグは付いていても、詳細ジャンルまではタグ付けされておらず、検索して見つけ出せるとは限らないからです。

そしてそもそも、その作者のTwitterなどの発信手段と、イベントのページ、通販ページの連携がほとんどできていません。

また各サークルもそれぞれnoteなどに紹介記事を書いたり、個人のWebサイトを持っていたりしますが、それらの情報は分散しており、 結果として一元的、網羅的なチェックは難しいです。新刊告知などにTwitterは有用ではありますが、SNSの常として、情報の流れが速く見逃してしまうことも少なくありません。

技術同人誌ポータルサイトでできること

上記のような問題意識をもとに、技術同人誌のポータルサイトを作ろうと思い至ったわけですが、まずは要件定義として、このポータルでできること、できないことをおおまかに決めました。

これらの要件は後ほどみんなとの相談の中で詳細を詰めていくため、全てがそのまま実現するとは限らないのですが、まず議論ができるように、たたき台として整理しました。 おぼろげながらでも形がないと相談もできませんからね。

そしてそれらの話を他に人に伝えることから始まります。全てが決まっていなくても構いません。穴があってもよいのです。「今こういうことを考えていて」という話ができることが重要です。 ただし、ここに書いてあることも実は数回の相談をしたあと整理しなおしています。したがって本当に最初に考えたことと完全に一致するかというと別です。とはいえ基本のコンセプトは変わっていないつもりです。

本のページ

まず考えたことは、本を基軸に据えるのか、サークルを基軸に据えるのか、という観点です。これについては自分のなかで、本のページを基軸にしようと案外早く固まりました。

新しい本との出会いという観点では、本のページを作って、タグ付けして類似する本に出会うチャンスを作る、あるいは盛り上がっているジャンルがわかるようにするなど、本を基軸とすることでできることがあると考えました。

本を基軸とすることで、サークルがジャンル替えしても、新刊、既刊ともにジャンル分けすることができます。運用としては、本を登録する際に、適切なタグを付けてもらいます。そのタグが付いている本を集めたページを作ることで、ジャンルごとに本を一覧することが可能になります。

さらに、本のページから、他のイベントへの登録項目を転記するといった使い方もできます。

あくまで本の単位での登録を主軸とし、それ以外のページ、機能は従の要素であることが明確に決まっています。

サークルのページ

とはいえ、サークルのポータルサイトとしての側面を持つことも重要です。「このサイトに来れば技術書を扱っているサークルを一覧で見渡すことができる。」これは重要な技術同人誌ポータルの機能です。サークル主としても、自分で自サークルのポータルサイトを作ってそれを周知する労力はかなりのものです(すでにやってらっしゃるかた、本当に頭が下がります…)。

サークルの本の一覧、自分が出るイベントへのリンク、サークルの紹介やTwitterカラムなどがあると良いですね。

ジャンルごとのページ

自分が探している本に近い本を探すのは大変です。一般にイベントページの検索はあまり精度が高くありません。全文検索ではノイズも多くなりますし、コンテンツそのものを登録しているわけではないので、サークル主が登録した情報の範囲内での検索が主になります。また表記揺れなどの問題もあるでしょう。

特にジャンル替えしたサークルの既刊などを見つけ出すのはかなり難しいです。イベントでも新刊を基準にジャンル、配置を割り振ることは多いです。 それらの結果として、物理本が売り切れてしまうと、過去にそのサークルがその技術同人誌を出していたという情報はどこにも存在しなくなってしまう (一般の利用者がそれらの情報が存在したことに気づけなくなる)ということが実際に起きています。

BOOTH等で頒布していても、検索にヒットするとは限りませんし、BOOTHのタグは粒度が大きい分、ノイズが大きくなりがちです。

そういった意味で、技術同人誌ポータルでは、運営で用意したタグから選んでもらう形でタグ付けするのはどうだろうか、と考えました。 粒度を固めつつ、表記揺れの問題、あるいはタグを付けすぎてノイズになる問題を解決することができます。

もちろん、当初想定していなかったタグが必要になることはあるでしょう。それについては、運営への連絡が迅速にできるようにし たらどうだろうか、あるいはTwitter等で「こんなタグが欲しい」という観点で記載してもらうということも考えています。

イベントのページ

次のイベントに参加しているサークルが見れることは便利ですよね。ある意味で基本的な機能とも言えるでしょう。

参加するサークルをピックアップするだけなので、きっと実装は難しくないと信じています。ただし、当該イベントにおける配置順を反映するところまで考え始めると複雑になるので、 それは実際には実装しないかもしれません。

むしろ、後日「あのイベントにこのサークルが参加していたのか!」と悔しい思いをすることで、次のイベントでは確実に訪問するきっかけにするといった方が効果としては重要かもしれません。

リコメンドや特集のページ

タグを活用することで、今アツいジャンルを見ることができるかもしれません。また、同じタグをもつ本を紹介して、新しい本との出会いのきっかけにすることもできるかもしれません。

過去1週間、1ヶ月に登録された数が多いタグは、今ホットなテーマに近接するタグである可能性があります。またそのタグに関連する本を、リコメンドとして表示することもできるかもしれません。

積極的にスコープを絞って探すのも重要ですが、受動的に流れてくる中で自分に刺さる本を見つけ出すのも良いものかもしれません。あなたも、Twitterで流れてきたマンガや本をその場でポチった経験はありませんか?それこそが新しい本との出会いです。

もちろん、プッシュしすぎると得たい情報に対して与えられる情報が過多になり、うざくなるのも事実です。 ギポタルでは、いい感じのレベルを見出して、ストレスなく、だけど新しい情報が手に入るというちょうどいいところを追求したいと思います。

できないこと・やらないこと

逆に、できないこと、やらないことも決めます。

できないことの第一は、このサイト内で電子版や物理本の頒布をしないことです。これは当初から明確な形で機能・仕様から外しました。

購入のための仕組み作りも大変ですし、お金を扱うこと(決済金を振り込むまで預かる)などの実オペレーションを含む機能は セキュリティ上考えなければならないことが増えるとともにその設計・実装・運用の難易度も一気に上がります。

物理本を扱うには、本を預かるといった付帯的な作業も増加します。購入システム、決済システム、発送などの段取りなど、頭が痛くなりますね。

技術同人誌ポータルがもたらす(かもしれない)世界

本節では、ギポタル|技術同人誌ポータルがもたらすかもしれない世界について述べます。有り体に言えば、このポータルサイトのご利益ですね。実際の機能よりも少し具体的かつ夢物語を含みます。

本の入手までがお手軽に

それぞれの本のページには、BOOTHやとらのあなといったサイトへのリンクを貼ります。できることできないことの中で触れましたが、このポータルサイトの中で決済や本そののもの頒布をすることは考えていません。ですが、どこからでも3クリック以内で決済サイトまで到達できることを目標としています。

イベントページを見てたら、既知のサークルがあり、その新刊を購入する場合、

イベントページ>1クリック>サークルページ>2クリック本のページ>3クリック>BOOTHのその本のページ

となります。

また、特定ジャンルで探していたら、といった場合、 ジャンル一覧>1クリック>本のページ>2クリック>BOOTH と移動する事ができます。

また、関連するジャンルをみる場合でも、 フロントエンドのページ>1クリック>タグ”TypeScript”のページ>2クリック>その本のページ>3クリック>BOOTHのページ

という形で移動する事ができるでしょう。

本を見かけた瞬間から、決済完了するまでの導線、ラグは短いほど良いです。

あるいは、Twitterから、サークルのポータルページ→本のページ→委託ページ、といった形で検索、移動する事ができるでしょう。

今までのような、本のタイトルをGoogleで調べて、とらのあなで扱ってるらしい→検索してみて、たくさんの本の中から探す、あるいは見つからなくてがっかりする、なんてことはなくなります。

類似の本の検索性が上がる

タグにより、似たような本はひとまとめにされます。表記揺れといった些細な(でも検索性に直結する)ストレスから解放されます。

興味ある本、あるいは既知のサークルの本を入り口として、そこにあるタグをクリックするだけで、同じジャンルの本にすぐにたどり着けます。

また、タグのページには類似のタグ、あるいは上位概念や下位概念のタグを、オススメタグとして載せる予定です。したがって、「そのタグを辿って上位概念に移動してより検索スコープを広げる」「下位概念に移動して特定の技術・ジャンルに絞る」といったことが可能になります。

タグは多すぎるとまた検索性や精度を落とすことになります。なので、5つ程度に絞ることを考えています。

初心者サークルのために

初心者サークルのための施策をいくつか打つ予定です。

まずは、「初参加」タグ。これを見るだけで、新しく界隈に来た人を知ることができるでしょう。

それから、初参加に向けてさまざまな情報を乗せていく予定です。執筆のノウハウ、入稿の知識、イベント準備や告知といった、サークル参加についてのノウハウのページを作る予定です。初参加の人・サークルにとって、これらの知識というのはやはりハードルが高いとともに、Web等での情報として十分に体系立てた情報を探すのも大変です。

技術書において、初動の頒布部数の見込みは他の創作系同人誌とはかなり異なります。内容が十分で告知を十分に行うことで100部といったレベルでの頒布は比較的容易です。創作系の同人において100部というのは中堅以上、あるいは相当大手に近いところです。そういった意味での部数の読み、あるいは頒布価格の設定などへのアドバイスを行うことで参入障壁を下げたいと思っています。

また、サークルの告知・周知という観点でも、ポータルサイト内にサークルページがあるということは重要です。単純に導線が増えることが期待できます。 あるいは結成当初のサークルのためあまりフォロワーがいない状態だとしても、「とりあえずここに登録しておけば一定の検索流入が見込める」といった状況を期待しています。

実装に向けて

いよいよ、実装と実現に向けた準備を進めていきますが、ここに述べた内容をコンセプトに、たくさんの人が集まってくれました。得意分野もそれぞれ異なります。こんなみんなが一つのチームとして集まることでギポタルは出来上がります。

なお、ギポタルはリリースされて終わりではありません。サークルとして登録する、タグや企画についてのアイディアを出す、周りのサークル主に登録を呼びかける、ギポタル経由で本を探す、あるいはアクセスするだけでも大きな参加です。 実装コードを書くだけが参加ではありません。

この本を読んで興味を持ってくださった方は、ぜひ運営チームに入りませんか?一人より二人、二人より三人、人数が増えるほど新しいアイディアが出てきます。より良くなるでしょう。

ぜひ参加をおまちしております。

また、後述しますが、この開発プロジェクトは基本モブプロにて進めていきます。ペアプロという、二人でプログラムを書いていく開発手法兼教育方法がありますが。モブプロは3人以上で実施するものです。チーム全員のスキル底上げと、知らないことを知るというメリットがあります。数人いれば誰かが知っていることも少なくないでしょう。開発のスピードアップが望めます。

はじめてみると、毎回楽しく、学びの非常に多い開発になっています。この後それを赤裸々に書いています。お楽しみに!

[column] なぜ参加したのか? 〜FORTEの場合〜

ギポタルの開発に参加したのは単純に面白そう!と思ったから、です。 具体的には以下の点が期待できました。

  • 仕事以外でチーム開発できること
  • モブプロに参加できること
  • 自分の知らない技術が勉強できること

このコラムを書いている時点で、1ヶ月以上経過していますが、上記をすべて満喫しています。またやる前に気づかなかった点として、参加者みんなのやる気がすごい、前向きな姿勢に刺激されるのが非常に心地よいです。心理的安全性があるというと伝わりやすい人もいると思います。知らないことを学ぶときにはある程度のストレスがかかるものですが、やる気のあるメンバーと立ち向かうことで非常に楽しく学べています。

一度リリースして終わり、というたぐいのサービスではないでしょう。きっと楽しくやれると思いますので興味がある人はぜひ!一緒に開発しましょう!

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[column] なぜ参加したのか? 〜onigiriの場合〜

ギポタルの開発に参加したのは、以下の2点です。

  • 仕事上では関わりないけど、同じエンジニアコミュニティにいる人とプロダクト開発したらどうなるのか気になった
  • 現業の開発とは違う角度の学びがありそうだった

自分自身ウェブフロントエンドが得意だと思っていたのですが、他の優秀なメンバーの前に「全然そんなことなったな。。。」と気づかされたりして、非常に学びや気付きの多い開発でした。これからリリースした後の問題や課題も出てくると思うので、それらをこのメンバーで一緒に解決していけると思うと楽しみです。

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Footnotes

  1. なお、同人誌を書店やBOOTHなどに置いてもらうことを委託といいます。同人誌は本来制作者が直接頒布(販売)することが前提で、他のプラットフォームに販売を「委託する」ためです。また、同人誌を売ることを、販売ではなく頒布という呼び方をすることがありますが、特に意図を持った使い分けをしているわけではありません。